未開人はなぜ開発を拒むのか


これらの社会の示す開発への抵抗は、それぞれの社会が自然と文化のあいだに、独自な関係をつくりだしているということからも説明されます。開発とは、自然に対して文化を優先させることであり、このように文化を優先させるのは、工業文明だけだからです。


自然と文化という二つの領域の区別はたしかにどのような社会においても認められます。またどのように素朴な社会であっても、動物的状態から人間的生活を区別する、食べものの調理、土器づくり、機織りなどの文明の技術を、高く評価しています。


それでもなお、いわゆる未開人における自然の観念には、つかみどころのない面がつきまといます。自然は、「文化に先立つもの」であると同時に「文化の下にあるもの」であり、人間が先祖や霊、神に出会う領域でもあるのです。つまり彼らの自然の観念には、「超自然」の要素が含まれているのです。文化は自然の上に立ちますが、超自然はその文化の上に立っているのです。


平凡社ライブラリーレヴィ=ストロース講義」 P105〜106

  • 別の箇所で「事物の本質、すなわち超自然」という記述も見られる
  • 初期教会やイスラム神学における利子の禁止を、原初の無垢な状態を保つべきであるという考えから説明
  • 「自然 対 文化」 の対比と、「女性 対 男性」の対比は多くの社会で同じものとみなされている。